松岡修造氏 錦織快勝を分析

世界王者が全く王者らしくなくなってしまった。そうさせたのは圭のテニスだ。世界一の守備力を誇るジョコビッチに対して、その守備力を完全に上回る攻撃力、想像力を発揮して何もさせなかった。あれほど動きの止まってしまったジョコビッチはここ数年見たことがない。今大会は調子もよかったはずだが、試合が終わった時には「おまえのテニスの方が上だったよ」と圭に声をかけたのではないだろうか。

 この日の圭のストロークは5月のナダル戦(※1)を思わせるほどよかった。どんどんベースラインの内側に入って仕掛けていく。あそこまでコートの内側に入ってバックハンド、ドロップショット、スピンを打っていける選手は今までにいなかった。あえて挙げるとすればフェデラーだろうが、フェデラーに圭ほどのバックハンドの良さはない。

 圭のバックハンドは間違いなく世界No・1。ジョコビッチもバックハンドのストロークを得意としているが、それ以上に安定していてコンパクトなので攻撃もできる(※2)。そのスタイルはかつてないほど攻撃的で、日本人でなくてもファンになるようなテニス。世界のテニスを変えてしまった、と言えるほどだ。