現役続けられる理由

今季は開幕前から記録への興味がついて回った。ケガ予防のためオフの間に5キロ減量し、約20年ぶりに新しい変化球にも挑んだ。大みそか恒例の親族の集まりも初めて欠席し、開幕へ万全を期したはずだった。しかし、春先からなかなか調子が上がらず、6月にはナゴヤ球場で「一人ミニキャンプ」を決行。フォームを一から見直した。「もう駄目か」という思いが頭をよぎったが「“夏に強い”と暗示をかけて」自分を奮い立たせた。

 引き際について考えない日はない。今季を迎える前にも、日米2人の名選手の引退表明会見での言葉が胸に響いた。「ジーターが“野球が楽しくなくなったから辞める”と言ったけど、宮本慎也(前ヤクルト)は“楽しいと思ったことは一度もない”と言った。逆だよね。いろいろと考えさせられたけど、やっぱり僕は宮本の言葉に共感した」。ここ数年、オフの前には「もういいんじゃないか?」「まだやれる」という葛藤の繰り返し。ただ、気持ちが引退に傾きかけた時も、体を休めることだけはできない。本人の言う「悪あがき」でつかんだ白星。現役を続けられる理由を聞かれると「しつこい性格だからじゃないですか」と笑った。

 この日は、昨オフに再婚した美智子夫人(33)のお手製の野菜や果物が入った「パワードリンク」を飲んで出陣した。「結果は最高だけど、内容はもっともっと欲を出していきたい」と山本昌。「50歳」という数字も見えてきた。これがゴールではない。「球界のレジェンド」の新伝説が始まった。